ページの先頭へ

JAPAN FUR ASSOCIATION 一般社団法人 日本毛皮協会 公式サイト

twitter facebook

JFAファーデザインコンテスト2014最終審査会・表彰式レポート

「JFAファーデザインコンテスト2014」の受賞作品と受賞者

世界レベルのクリエイターが巣立つ場に

今回で13回目を迎えたファーデザインコンテストは、感性豊かなデザイナーの育成と発掘、また毛皮協会各社の技術向上と豊かな才能との出会いを目的に、毎年開催しているものです。このコンテストで昨年グランプリを受賞された大橋聖平さんが、今年3月に開催された国際毛皮連盟(IFF)主催の国際コンペティション「REMIX2014」でも見事に優勝を果たすなど、これまでに数多くの若手デザイナーがこのコンテストでの入賞をきっかけに活躍の幅を広げています。
2014年はファーデザイン業界で日本人若手デザイナー活躍のニュースが多く聞かれる1年で、「ASIA REMIX」では原奈美さんが金賞を受賞、「アジア・ヤングデザイナーズ・ショーケース」では伊藤裕也さんが優勝と、日本人デザイナーのダブル受賞が話題になりました。そして来年開催の「REMIX2015」には、今回のファーデザインコンテストの受賞者の中から3名をエントリーする予定。このコンテストが世界レベルのクリエイターの登竜門的存在となってきていることを物語っています。
今回は海外の3つの団体から、作品製作のための原皮が提供されました。アメリカン・レジェンドよりブラックグラマ、ノースアメリカンファーオークションズ(NAFA)より黒に染めたビーバーとレッドフォックスの野生の毛皮、コペンハーゲンファーよりサファイアミンク。これらの上質のファーが、若いデザイナーの創造力により、素晴らしい作品の数々に生まれ変わってステージ上に登場したのです。

グランプリを受賞した河上遥さん(右)

テーマは「活かそう自然からの贈り物」

未来の子孫たちに「きれいで豊かな地球」を残せるように・・・そんな思いをもって、JFAでは文化としてのファッションに毛皮が使われることをプロモートしています。毛皮は保温性・耐久性に優れ、リメイクによって無駄なく使い切ることのできる天然素材。寒い季節に毛皮を着用することでエネルギー消費の削減につながり、地球に貢献できると考えています。
1コンテストは毎年テーマを決めて作品を募集しており、今回は「活かそう自然からの贈り物」がテーマ。ふわふわと柔らかな感触と温もりで、着る人に安心感を与えてくれる毛皮という素材は人類最古の服ともいわれ、まさに自然が人類に与えてくれた贈り物です。その特性を活かすために、若手デザイナーたちはどんなアイデアを生み出してくれたのでしょうか。
全国47の服飾専門学校・大学をはじめ、一般の方々からも応募された総数2282作品の中からデザイン画による一次審査を通過した20作品が、この日ファッションショー形式の最終審査に臨みます。13時にいよいよショーが開催、ファイナリストたちの作品が次々にステージに登場すると、審査員たちが真剣な眼差しで作品を見定め、採点していきます。そして、すべての作品が紹介されると、ショーはいったん休憩。5人の審査委員たちはその間にバックステージにて厳正な審査を行いました。
最終選考の審査が終了すると、いよいよ結果発表と表彰式です。見事グランプリに輝いた河上さんをはじめ、各賞を受賞した若手デザイナーのみなさんが壇上にあがって表彰されます。受賞者インタビューでは口々にバックアップしてくれた人たち、とくに協力会社のスタッフへの感謝の言葉を述べていました。最後に審査員の方々よりひと言ずつコメントをいただき、審査委員長の小西良幸さんの審査員総評が述べられてコンテストは幕を下ろしました。

会場で審査に当たる審査委員の皆さん

審査員評

田居克人さん

今年設定された「活かそう自然からの贈り物」のほかに「創造力」「想像力」「知識」「販売」という4つのテーマもこのコンテストにはあると思いますが、その全てを満たした作品というのは出ていなかったかもしれません。ただグランプリの作品はピカソの作品からインスピレーションを受けたということで、パッチワークも美しく、テクニックも素晴らしいと感心しました。受賞者のなかには保温性という毛皮の機能をよく理解している方もいらして、それもよかったかと思います。

アキラナカさん

最終選考に残った20作品はどれも優れていましたが、受賞された方々が一歩秀でていた部分というのは、それぞれの技術や素材が上手く使いこなせていたということだったと思います。コンペはクリエーションの実験の場となってしまうケースもありますが、今年は以前に比べてファーのアイテムを着る人を想像してデザインしている人が増えたのではないかと感じました。今後もスペシャルなものを作っていただき、それがだれかに届くような形で想像力を膨らませていってほしいです。そうすることがコラボした企業の方への恩返しにもつながると思います。

廣川玉枝さん

いま壇上に上がっている全員が女性です。女性ならではの「自分が着たい」というイメージと「創造したい」という気持ちのバランスでよい作品ができたのではないかと思います。今回は毛皮を使って絵画のような表現をしたものや、素材の組み合わせの面白いものがあり、私も女性として着てみたいと思う服がたくさんありました。ファーは本当に可能性のある素材なので、この機会を次のステップに生かして、新しい創作に向けて頑張ってください。

原由美子さん

今回、多くの色を使いながら、毛皮という難しい素材を上手にまとめあげることに成功した作品が多かったと感じています。製造を担当した毛皮会社の方々の大変さもさることながら、デザイナーのみなさんも粘り強く取り組んだのだろうと感心しました。デザイン画を見た段階では実現できないのではないかと危惧するような大胆なものも多かったのですが、見事にこのように形にしたのは本当に素晴らしいことです。今後は実用性や毛皮のあたたかさを生かすことを考えた作品がもっと出てくると、コンテストの意義が更に分かりやすくなるのではないでしょうか。

小西良幸さん(総評)

他の審査員の方々もおっしゃいましたが、今回はアート作品のようなカラフルな作品が多かったと思います。さすがに受賞作品は素材と色を多く使いながら上手くまとめたという印象です。受賞した作品とそうでない作品の差は、最初から自分のイメージがきちっとできていたかどうかという点だと思います。唯一無二の自分らしさをしっかりテーマをもって表現できた作品が受賞につながったのでしょう。このコンテストはデザイナーと企業とのコラボレーションで、前者はソフトで後者はハードであるといえます。デザイナーのみなさんはソフトとしての役割をきちっと果たしていくことが大切なのです。
また実用性・商品化とクリエーションはいつも背中合わせにあり、それは我々にとって永遠のジレンマですが、今回の受賞作品はデザイン画の行き過ぎたところを制作段階で少しトーンダウンして成功しているので、その点もさすがだと思いました。今後は次世代に投げかけるアイデアや、毛皮加工の新たなテクニックを見いだしてくれることを期待しています。そういう面で毛皮協会に反映できるコンテストであれば最高ですね。

◇最終審査会・表彰式

2014年11月27日(木)13:00~15:00 東京・東銀座 時事通信ホール

◇主催

一般社団法人 日本毛皮協会(JFA)

◇後援

経済産業省、カナダ大使館、デンマーク大使館 ※順不同

◇協力

国際毛皮連盟、アメリカン・レジェンド、コペンハーゲンファー、サガ・ファー、ノースアメリカンファーオークションズ、香港毛皮業協会、東京毛皮商工業協同組合

◇各賞受賞者

●グランプリ:河上 遥 (名古屋モード学園) 
賞状、賞金50万円、副賞(サガデザインセンター研修旅行及び2015香港インターナショナルファー&ファッションフェア招待)

●サガ・ファー賞:小池 優子 (エスモード・ジャポン東京校) 
賞状、賞金10万円、副賞(サガデザインセンター研修旅行

●アメリカン・レジェンド賞:石野 愛弥 (一般)
賞状、賞金10万円、賞品

●NAFA賞:野中 優 (名古屋モード学園)
賞状、賞金10万円、副賞(スタジオNAFA研修旅行)

●コペンハーゲン・ファー賞:玉木 郁実 (神戸ファッション専門学校)
賞状、賞金10万円、副賞(コペンハーゲンスタジオ研修旅行)

●HKFF賞:丸地 把奈 (名古屋学芸大学)
賞状、賞金5万円、副賞(2015香港インターナショナルファー&ファッションフェア招待)

◇審査委員

小西 良幸、原 由美子、廣川 玉枝、アキラナカ、田居 克人 ※順不同・敬称略